いつも御覧いただきありがとうございます。東館4階時計売場の松尾です。
本日は、現在の腕時計に備わるデザインや機構の約70%を発明・改良し、時計の歴史を200年進めたといわれる『Breguet(ブレゲ)』より、シンプルながらもブレゲらしさを凝縮した「Classique(クラシック)7147BR/29/9WU」をご紹介いたします。
Breguet(ブレゲ)
Classique
Ref.7147BR/29/9WU ¥3,729,000(税込)
創業者アブラアン-ルイ・ブレゲが理想とした時計を求めて1972年に作り上げられたクラシックコレクションは、丸形のケースに直線的なラグといったシンプルなデザインをベースに、ブレゲ針、ギヨシェ、コインエッジ、ブレゲ数字、複雑機構等の同氏が生み出した意匠や技術を引き継いだ数多くのモデルを保有するコレクションです。
その中でも「7147」は、40mmのケースに大きく広がる文字盤に職人の手作業によるギヨシェが施されたタイプと、グラン・フーエナメルが採用されたタイプの2種をベースに、2針のブレゲ針、オフセンターに配置されたスモールセコンドによって構成されており、無駄のないエレガンスを追求したコレクションです。腕での納まりが良いうえ、直線的なラグによって強調された丸いケースと文字盤が美しく腕元を飾ります。
今回ご紹介する時計はブレゲの時計の中でも極めてシンプルといった印象ではありますが、その中に秘められた魅力について少し語らせて頂きたいと思います。
まずは、こちらの時計のメインとなる「グラン・フーエナメル」という特殊な技法によって焼成されたエナメル文字盤についてです。
そもそもエナメルダイヤルは、ガラス質のエナメル粉末を金属盤の上に載せ、800度近くの熱で焼成を繰り返しさせて作り上げます。つまり、粉末上のガラスでコーティングされていることから、通常の文字盤よりも耐傷性に優れ変色しにくく、独特の艶をもった美しい文字盤を永くお楽しみいただけるという特徴があります。
しかし、焼成前の塗布にムラがあったり精密な温度管理ができないと割れてしまうため、文字盤加工技術の中でも特に難しい技法であり焼成できるブランドは限られています。
そんなエナメル加工の中でも、特に高度な技術とされる「グラン・フーエナメル」は、さらに高温の1,000度近くの炉で焼成を行います。より高温の炉の温度管理は難しく、完成しても基準に満たない場合も多い為量産は困難を極めますが、通常のエナメル文字盤に比べ、きめ細かく艶やかで、圧倒的に美しく仕上がります。焼成時に釉薬の成分に火が付いて大きな炎が上がる事から“グラン フー=偉大な炎”と呼ばれています。)
また、金属面が表に出ていないため、ある程度強い光の下で見ても乱反射して視認性が落ちるということなく、作品本来の美しさをご体感いただけます。
そして、この美しい白文字盤によって際立つ「ブレゲ針」と「ブレゲ数字」にもこだわりが感じられます。どちらも1783年に考案され、200年以上経った今でも引き継がれている歴史的意匠です。
まずブレゲ針ですが、美しいブルーと特有のオフセンターに穴が開いた針先のデザインが特徴的な為、ご存じの方も多いかもしれません。実はデザインだけでなく機能的にも重要な役割を果たしています。
①細長く伸びた針はミニッツトラック上までしっかりと届いており、針先のデザインによってパッと文字盤を見たときに時刻が読み取りやすくなっている。
②長針と短針が重なってしまった際にも下に位置する短針を目視する事が可能で、文字盤の印字と針が重なってしまった時でも文字盤側の数字が隠れないようになっている。
③針が垂れずにまっすぐ伸びるように軽いステンレスを採用し、青焼きを施すことによって耐腐食性と強度を備えるため、美しいブルーを長期間にわたって維持することが出来る。
上記3点が大きな特徴です。また、このモデルはスモールセコンドに目盛りを配置せずに、湾曲させるのが難しいエナメルにも関わらず窪みを設けており、全体的なエナメルの美しさを損なうことなくインダイヤルの役割を果たしています。
次にブレゲ数字ですが、「今までに無いデザインのインデックスを」というブレゲの望みを体現したこの数字は、インデックスにローマ数字の採用が多かった当時、あえて視認性の高いアラビア数字を採用したという歴史があります。また、星を象った分目盛や百合の花をモチーフにした5分毎の目盛とともに、視認性を確保しながらも洗練されたデザインに昇華されています。
ちなみにこちらのモデル、3時位置をよく見てみると偽造防止のシークレットサイン(Breguetと書かれています)が刻印されており、ここにも隠れたブレゲらしさが表現されていますね。
搭載しているのは自動巻きのフレデリック・ピゲCal.70をベースにしたキャリバー502.3SDです。
自動巻き機構をオフセンターに設置することで厚みを2.4mm に抑え、ケースのコインエッジと同様に手作業で施されたコート・ド・ジュネーブ装飾のプレートや、極小のクルドパリ装飾が入った22Kローター、ローターのレール上に施された虹色に光る筋目仕上げ等、歪みの無い精密かつ美しい仕上げがご覧いただけます。
また、香箱も肉抜きされており、ぜんまいが巻き上がる様子を見ることができたり、ガンギ車を送る動きも見やすくなっていたりと、パーツごとに見ても楽しめる構造になっています。
機能面においてもフリースプラング・テンプにシリコン素材のひげゼンマイを採用し、さらにシリコン製ホーンのインバーテット・インラインレバー脱進機の採用によって、優れた耐磁性能を備え、温度変化による精度への影響も緩和できるようになっております。
まだまだ語るところが多いクラシックコレクションですが、デザインへのこだわりだけでなく、仕上げ、機能、着用感どれをとっても最高峰のドレスウォッチだといえると思います
今回ご紹介したこちらの時計を含め、ブレゲの時計は、どれも時計の歴史が詰まっていると言っても過言ではありません。さらに、近年にかけてシリコン製パーツの開発や、振動数の増幅等、実用性においても進化を続けています。
天才時計師アブラアン‐ルイ・ブレゲがもたらしたデザインや技術は今でも引き継がれ、今では多くのブランドが採用していますが、その原点である「ブレゲ」はより一層洗練されたコレクションをご覧いただけます。
「腕時計」の本質を極めた「クラシック」をぜひ店頭でご覧くださいませ。