ご覧いただきありがとうございます。大丸福岡天神店 東館4階時計売場の甲斐です。
本日は“神の手を持つ”、“ブレゲの再来”と称される天才時計修復士であるミシェル・パルミジャーニが創業したスイスのウォッチメゾン『PARMIGIANI FLEURIER(パルミジャーニ・フルリエ)』についてご紹介いたします。
まず転換期となった2021年の話をする前に、ミシェル・パルミジャーニ氏についてご紹介しておきましょう。
1950年12月2日にスイスはヌーシャテルのグヴェにて生を受けたミシェル・パルミジャーニは、芸術性と技術性の両側面を持つ時計と建築に情熱を注ぎ、1976年に自身の時計制作および修復を行う工房、ムジュール・エ・アール・デュ・タンを設立します。
ここで言う「修復」とは「修理」とは違います。
修理というのは必要箇所に対して図面や技術をもとに元通りの機能を回復することですが、修復というのは機能の回復だけでなく当時の姿へ戻し維持することが重要視されます。数百年前の作品には図面や説明書が存在しないため、その作品が作られた時代を理解し、どのような工具を使用しどのように作られたかを考察した上でアプローチするという圧倒的な知識量と理解力、そして技術と思考の柔軟性が揃っていないと成り立ちません。
そんな非凡な才と情熱を持つミシェル・パルミジャーニ氏は、パテック フィリップ・ミュージアムやシャトー・デ・モン(ルロックル時計博物館)が保管する重要なタイムピースの修復依頼を受ける傍ら、個人での時計制作も行っていました。
そして、その修復工房の顧客の一人であったサンド・ファミリー財団(スイス最大手の製薬メーカーが母体)の全面バックアップにより創業されたのが『PARMIGIANI FLEURIER(パルミジャーニ・フルリエ)』です。
創業当時よりこのブランドの重要な目的は“ミシェル・パルミジャーニの知識、技術を100%体現する”という事でした。実際に初期の作品には彼が情熱を注いだ建築や時計、そしてそれに関わる歴史や技術を具現化したモデルが複数存在します。
この目的を達成するために重要だと考えられたのが「内製化」でした。
この重要な内製化を進めるためにスイスを代表する専門メーカーをM&Aで吸収したパルミジャーニ・フルリエは、それぞれを垂直統合ではなく独立したメーカーとして確立させました。これによりグループの垣根を超えた共同開発や技術提供が可能となり、より幅広く深い知識と技術をパルミジャーニ・フルリエに還元することが可能となったのです。
その5つというのが、
①ヴォ―シェ・マニファクチュール・フルリエ(ムーブメントの開発、設計、製造)
②レ・アルティザン・ボワティエ(ケース、外装)
③カドランス・エ・アビヤージュ(ダイヤル、針)
④アトカルパ(ひげぜんまいを含む調速機主要パーツ)
⑤エルウィン(極小ネジや歯車)
です。
其々の専門性および技術はスイスの時計業界を牽引するほどで、オーデマ・ピゲやリシャール・ミルを代表に皆さんが名前を聞いたら驚くであろう多くの最高峰のウォッチブランドへ技術やパーツを提供しています。(非公表のブランドがほとんどですが…)
さて、簡単なご説明は以上として本日のテーマは「再定義」です。
創業から約28年経ち、様々なコレクションを世に送り出してきた同ブランドですが、ブランドを再定義する大きな転換点となったのは新CEOグイド・テレーニ氏の着任でした。彼はブルガリに20年以上在籍し、時計部門責任者も務めた経歴を持つ人物で同社の傑作「オクト」を手掛けたことでも知られています。
そんな彼がインタビューにて自身が入社する前のパルミジャーニ・フルリエについて以下のように語っています。
“ブランドは10年か12年のあいだに少し方向性を失ったと言えるでしょう”
引用先:Hands-On パルミジャーニ・フルリエ トリック プティ・セコンドがオリジナルコレクションに新たな息吹を吹き込む(HODINKEE Japan)
この彼が言うブランドの方向性(アイデンティティ)というのは「創業者ミシェル・パルミジャーニの圧倒的な技術と知識(熟練)」、そして「奥ゆかしさ(自制)の表現」だとも別のインタビューで語っています。
天才修復士として今も工房に立ち続けるミシェル・パルミジャーニは、現代の時計はもちろんですが古いものだと約500年前に製造されたオートマタやクロックを数えきれないほど修復してきました。この修復を通しその時代背景から時計製造の技術、そして工具に至るまでを理解し、その作品たちをよみがえらせてきたという事になります。
この時代を超えた知識、そして技術は彼に刻み込まれており、その熟練した経験値を体現したブランドこそパルミジャーニ・フルリエであるとテレーニ氏は語っています。
また、時計の修復というのは自身が目立つことを良しとはしません。あくまでその当時、その作品を手掛けた設計士、技術士とその作品にフォーカスが当たることが前提となります。
いかに天才と言われども、そういった奥ゆかしさ(自制)はラグジュアリービジネスにおいて稀有な存在であり、それを体現することこそがパルミジャーニ・フルリエのアイデンティティだと定義したのです。
そして彼はこうも言っています。
“パルミジャーニ・フルリエはブルガリとは逆で、すべてがあった。だから再活性化すればいいだけ、方向性を明確にするだけだった。”
そして、既に同社が整えていた最高峰の時計製造技術を、再定義したブランドアイデンティティを元に表現した初の作品が「トンダPF」として発表されました。
紹介記事:【PARMIGIANI FLEURIER(パルミジャーニ・フルリエ)】トンダ PF マイクロローター(PFC914-1020001-100182)
これは2019年のラグジュアリースポーツのヒット作「トンダGT」を洗練し、コニサーの為のスポーツシックなドレスウォッチへ昇華したモデルとして世に放たれました。
技術面ではベゼルのローレット加工によるモルタージュ装飾、ダイヤルのバーリーコーンギヨシェ、そしてヴォ―シェ・マニファクチュール・フルリエによる最高級ムーブメント等、挙げればキリがありませんがミシェル・パルミジャーニの技術と知識を表現するに値する素晴らしい技術が詰め込まれています。
また、インデックスをよりコンパクトにし、秒針を省いた2針に変更。また、ロゴは「PF」のみのシンプルなデザインを採用しよりシンプルに。誇示するラグジュアリーではなく、ブランドらしい“奥ゆかしさ”が強く感じられるプライベートラグジュアリーなコレクションとして実にミニマルにデザインされています。
彼はこの「トンダPF」というコレクションで、“創業者ミシェル・パルミジャーニの圧倒的な技術と知識”、そして“奥ゆかしさ”という2つのアイデンティティを満たし、パルミジャーニ・フルリエを再定義するに至ったのです。
今年はブランド創業時から代表的なコレクションであった「トリック」がブランドの再定義を経て復活することが発表され、すでに世界的に話題となっています。
ミシェル・パルミジャーニという天才修復士が持つ“知識と技術”、そして“彼自身の人間性”を純にブランドコンセプトとして再定義したグイド・テレーニが手掛ける、そんな“新生”パルミジャーニ・フルリエには期待しかありませんが、私たちも九州唯一の正規販売店、そして旗艦店として皆様にその魅力をお伝えすべく日々努力してまいります。
“彼(テレーニ)の想起するパルミジャーニ・フルリエの顧客とは、「時計を選ぶ際に、自分のステータスを誇示するのではなく、自分の知識と洗練さを輝かせたいと考える人」であり、彼ら・彼女らの選ぶ時計は「誰にでも認められるものではなく、適切な人に認められるもの」とテレーニは喝破したのである。”
ぜひ一度、新たなパルミジャーニ・フルリエのコレクションを当店にてご覧いただければと思います。
皆様のご来店を心よりお待ちしております。
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