さて、先日よりスタートした訪問記「パルミジャーニ・フルリエ ~スイス訪問記~」の第二弾ということで、今回はパルミジャーニ・フルリエに関連する工房視察のレポートです。
(↑今回、宿泊したのはパルミジャーニ・フルリエの母体であるサンド・ファミリー財団が所有する「ホテル・パラフィット」。美しいヌーシャテル湖の水上に各部屋が独立する形で建築されています。)
ジュネーブで行われる時計業界最大の新作発表会「Watches and Wonders Geneva 2025 」へ参加した後、パルミジャーニ・フルリエの本社および工房を視察させて頂きました。(同イベントで発表された新作については25日公開の第三弾でご紹介いたします!)
宿泊していたジュネーブ州からヌーシャテル州へは、 電車を乗り継いで約1時間半の道のり。美しいレマン湖とヌーシャテル湖を横目にゆったりとした時間が流れる車内でした。
まず最初に向かったのはパルミジャーニ・フルリエの本社と創業者ミシェル・パルミジャーニ氏が1976年に立ち上げた修復工房「ムジュール・エ・アール・デュ・タン」です。
(↑パルミジャーニ・フルリエの本社。奥にミシェル・パルミジャーニ氏のご自宅があります。)
(↑修復工房「ムジュール・エ・アール・デュ・タン」。現在では2名の修復士がミシェル・パルミジャーニ氏の下で世界中の依頼に応えています。)
本社と修復工房はフルリエの静かな街の雰囲気に溶け込むように建てられており、パルミジャーニ・フルリエというブランドがこの街に根付いていることを視覚的に感じることが出来ます。また、「クワイエット・ラグジュアリー」というブランドコンセプトについても、このフルリエの街と完璧にマッチしているようで、敷地内に入る前から一愛好家として興奮せずにはいられませんでした。
(↑サンド・ファミリー財団所有のフランス製オートマタを例に修復行程の説明をしていただきました。)
修復工房では、修復士の方が実際に修復した(または修復中の)コレクションを実機と共に説明してくださいました。ここでは年式やブランド(現存しないブランドも多い)を問わず設計図の無い作品を、当時の資料や歴史的背景を元に修復していくため、マニュアルに囚われない非常に幅広くかつ深い知識そして圧倒的な技術が必要です。
実際に彼らが手掛けた修復のレポートは一つの案件に対しA4用紙で軽く60枚を超えていました。そのレポートはお客様への報告書となるだけでなく、同工房にとって貴重な資料になります。設立の1976年から積み上げた経験と知識を現在そして未来に引き継いでいく考え方は、パルミジャーニ・フルリエの作品にもしっかりと表現されているようです。
(↑パルミジャーニ・フルリエの心臓部を開発製造する「ヴォーシェ・マニファクチュール・フルリエ」。)
次に訪れたのは、パルミジャーニ・フルリエのウォッチメイキングセンターのうち、同社のムーブメントの開発と製造を行う目的で設立された「ヴォーシェ・マニファクチュール・フルリエ」です。
本社から少し離れたところに建つこの工房は、先ほどの本社とは打って変わって近代的な印象。この工房内ではパルミジャーニ・フルリエはもちろんのこと、リシャール・ミルやオーデマ・ピゲといった名だたるブランドのムーブメント開発と製造を行っているため、同社専用の最新機器が多数取り入れられています。
(↑実際にパルミジャーニ・フルリエのトンダPFに搭載される自社製ムーブメントの組み立てを行っている工程。)
ムーブメントの開発からパーツの製造と仕上げ、組み立てや最終的な稼働チェックも可能としています。開発の方の話によると、パルミジャーニ・フルリエのムーブメントはミシェル・パルミジャーニ氏から届いたスケッチを基にCADデータ化し試作を行うようで、例として「トリック ラトラパンテクロノグラフ」に搭載されたムーブメントは6年の歳月と数億円の資金が投じられたとのことでした。
(↑「トリック プティセコンド」に使用される香箱受けの面取りを手作業で行います。根気と集中力、力の微細なコントロールが必要な作業です。)
また、「トンダPF クロノグラフ」に搭載されるCal.PF070の組み上げを拝見し、「トリック プティ・セコンド」に使用するパーツを手作業で磨く工程を見学させて頂きました。特にパーツの仕上げについては指先ほどしかないサイズのパーツを一日中磨き続けるということで、予想をはるかに超える根気のいる作業だということを今回初めて知ることが出来ました。
(↑「レ・アルティザン・ボワティエ」と「カドランス・エ・アビヤージュ」は同じビルで製造を行っています。コミュニケーションの面でメリットが大きいとのことです。)
最後に訪れたのはパルミジャーニ・フルリエのウォッチメイキングセンターのうち、ケース製造する名門工房「レ・アルティザン・ボワティエ」と文字盤を製造する「カドランス・エ・アビヤージュ」の2社です。
同ビル内にあるこの2社はパルミジャーニ・フルリエのウォッチメイキングセンターでありながら、スイスの名だたる名門のケースや文字盤を製造しています。知らない人はいないであろう名門からニッチな独立系まで幅広く製造を依頼されており、その技術や知識が全てパルミジャーニ・フルリエの時計製造に活かされているそうです。
(↑新作「「トリック カリテフルリエ パーペチュアルカレンダー」のダイヤルは18KWG製ということで製造が非常に難しいとのこと。)
(↑今年の新作「トンダPF GMTラトラパンテ ヴェルザスカ」のダイヤルにインデックスをセットする工程。緑とも青とも言えない絶妙なカラーリングが美しい。)
文字盤を製造する「カドランス・エ・アビヤージュ」では、文字盤に特徴のある様々なブランドを手掛けていました。その蓄積したノウハウが、最終的にはパルミジャーニ・フルリエの唯一無二とも言えるカラーパレットの表現を可能としています。
(↑素材の金属塊からケースの原型を切削する最新機器について「レ・アルティザン・ボワティエ」で説明しただきました。)
ケース製造する名門工房「レ・アルティザン・ボワティエ」では、制作したデータを元にひとつの金属塊を切削し原型を作成。各パーツのポリッシュもそうですが、ネジ穴を手作業で仕上げる行程は時計の実用性にも影響するため非常に繊細な作業でした。
(↑この「トリック プティ・セコンド」にとっては里帰りとなった今回の旅。いつもよりダイヤルが輝いて見えました。)
さて、書きたい話は沢山あるんですが相当な文章量になる為、今回はこの辺りで終わりにしておこうと思います。
第3弾(4月25日公開予定)は、パルミジャーニ・フルリエの新作についてまとめます。ぜひそちらもご覧ください!